ワンちゃん(ネコちゃんでも時々見られます)が自分のお尻を擦って歩いたり、しっぽを追いかけてぐるぐる回ったりしているのをご覧になったことはありませんか?あるいは、よくお尻の周りや腰を舐めたり咬んだりしていませんか?
そういう時は、お尻に脂(あぶら)が溜まっているかも知れません!
正確には、肛門嚢という袋状の構造物に皮脂などの分泌物が溜まっている状態のことを指します。肛門嚢とは、ワンちゃんやネコちゃんたちの肛門の両脇にある一対の分泌腺で、有名なのはスカンクのそれです。中に溜まっている分泌物は独特のにおい(僕らにとってはちょっと臭い!)がして、散歩中にワンちゃん同士がお互いのお尻のにおいを挨拶代わりに嗅いでいるのはこれなんです。この分泌物はどの子も溜まりますが、その多くは排便時に同時に排出されます。しかし、中には分泌物が出にくい子や溜まりやすい子もいて、そんな時にお尻の不快感が生じることから先ほどお話したような症状を示します(中には全く気にしない子もいますが)。
さて、そうこうしているうちに出てくれたらいいのですが、さらに溜まってくると肛門嚢が炎症を起こしてしまいます。そのため肛門周囲が赤くなり、硬く腫れるだけでなく、時には分泌物が化膿して出血を伴ったりすることもあります。これが肛門嚢炎という状態です。
さらにひどくなると、肛門嚢の出口が塞がってしまってついには破裂してしまいます。この、肛門嚢破裂という状態になると肛門の脇にもう一つ穴が開いたようになって、そこから膿汁が排出されます。そのため、常にお尻の周りがベタベタ汚れたような状態になってしまいます。
これらの病気は、いずれも本人にとっては痛くてストレスがかかるため、食欲が落ちたり性格が荒くなってしまう子もいます。
治療は抗生剤などを使って化膿を抑えつつ、とにもかくにも肛門嚢を洗浄し、詰まりがあればそれを取り除いてあげることです。
先日、当院にも肛門嚢破裂で治療に来た子たちがいるのでご紹介します。
1番目の子は「肛門の横が腫れている」ということで来院されました。右の肛門嚢が破裂していて、周囲の炎症も強く、腫れあがっています。この子は肛門嚢の出口の詰まりがなかったので、抗生剤を使いながら頑張って定期的に消毒に来てもらいました。8日目にはかなり炎症も和らぎ、18日目には完治しました☆
2番目の子は過去にも肛門嚢破裂を起こしていて、再発してしまったとのことで来院されました。この子は特に詰まりがひどかったのと痛みが強かったため、通常の方法ではコントロールできず、最終的には麻酔をかけて治療をしました。分泌物で塞がっていた出口に挿入した管を使って加圧洗浄したところ、詰まりが取れてきれいに治りました☆
このように肛門嚢が破裂してしまうと本人が辛いだけでなく、治療も時間がかかり大変です。一番の予防は定期的にこの分泌物を取ってあげることです。当院では、「肛門腺の処置」とか「お尻を搾る」という表現で説明をしています。お家でするのは難しいこともありますので、「そういえば、この子最近お尻を気にしていたなぁ」と思われた方は一度診せにお越しください。