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お腹が張ってしまって ~腸の腫瘍~

今回のブログは、手術の画像がありますので、苦手な方はお気をつけください。

先日、9歳になるネコちゃんが「1週間前から便秘」との理由で来院されました。
食べるけれど、しばらくして吐いてしまうという気になる症状もあり、いろいろ原因を考えながらお腹を触ってみるとタポンタポンした感触。
これは腹水が溜まっているだろうということで、飼い主さんと相談してレントゲン検査やエコー検査、血液検査など詳しく調べました。
その結果、やはり腹水が溜まっている所見が得られ、胃や腸にガスがかなり溜まっていました(レントゲンの写真で黒く写っているところです)。

黒く写っているのがガスです。

皮下脂肪が少なくて痩せているのに、お腹はボテッとしています。

検査の目的で採取した腹水です。お腹の中の炎症が疑われました。

エコー検査でも、腸の中を内容物が行ったり来たりしている様子。
これらのことから、腸閉塞が起きて、2次的に腹水貯留や腹膜炎が起きているものと考えました。
原因としては、この子は異物を食べる癖があるとのことで、何かが詰まったとも考えられましたが、腹水の性状からは腫瘍の疑いもありました。それ以外にも原因があるかも知れません。
ここまで説明をした上で、「お腹が張ったまま弱っていくのはかわいそう」という飼い主さんの思いから手術を行うことになりました。

ここからは手術の画像が入りますので、苦手な方はお気をつけください。

開腹をすると、やはりお腹の中は腹水で満たされていました。腹水を吸引して、胃から小腸、大腸と順に見ていくと、小腸から大腸へとつながる部分に病変はありました。回盲部と言われる、腫瘍や閉塞の起こりやすい場所です。ここがカチコチに硬くなっており、小腸の内容物が大腸へと流れにくくなっていたのでした。周囲の腸間膜やリンパ節、腹膜にも転移しており、悪性の腫瘍であることは明らかでした。しかもかなり広範囲に及んでいました。

腹水で満たされていました。

青丸が硬く、狭くなっている腫瘍の部分です。内容物が流れず、腸がパンパンでした。

腫瘍とその周辺を切除し、腸と腸を縫い合わせました。

このような場合、体力を温存して速やかに閉腹、となる場合もありますが、お腹の張りを取ってあげたいという飼い主さんの希望を考えて腫瘍の部分と傷んだ腸を併せて切除しました。そしてまだ健常と思われる腸と腸をつないで、手術を終えました。

年齢的なこともあり、術後の開腹を心配していましたがお腹の張りがなくなって楽になったのか、次の日には元気に鳴いてくれました。レントゲンでも胃腸のガスはなくなっています。病理組織検査の結果は「大腸癌(ガン)」という残念な結果でしたが、それでも飼い主さんに甘えるこの表情を見て、苦痛を和らげてあげられたことは良かったなと思っています。

胃腸のガスが減り、お腹の張りはなくなりました。

大腸にガスが移動しています。

素敵な表情を見せてくれました!

今も通院しながら闘病中ですが、少しでも長くこの子と飼い主さんに幸せな時間を過ごしてもらえたらと思っています。

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