今回の患者さんは10歳になる女の子のシー・ズーです。
少し前からトイレに行く回数の割には尿があまり出ず(頻尿といいます)、尿には血が混じるとのことで来院されました。
来院時は発熱もあり、尿の問題だけでなく食欲や元気も落ちていました。
そこで飼い主さんと相談して、尿検査だけでなく血液検査やレントゲン検査、エコー検査など総合的に行いました。
その結果、この子は膀胱の中に結石がある「尿路結石症」であることが分かりました。また、尿検査から細菌性膀胱炎を併発していることも分かり、尿路感染症のために発熱や食欲不振になっていたものと考えられました。
これはその時のレントゲン検査とエコー検査の写真です。赤い丸で囲んだ部分が膀胱にある結石です。
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膀胱の中の結石がエコービームを反射して白く写っています。その下側は黒い影(シャドー)ができるのが特徴です。
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骨と同じくらいの白さで写っているのが膀胱の中の結石です。たくさんあります。
入院治療中に尿に混じって小さな結石がコロンと出てきたので、それを検査したところ「シュウ酸カルシウム」という結石でした。これは「ストラバイト」という結石と並んで発生の多いもので、シー・ズーやミニチュア・シュナウザーは特に多いと言われています。このシュウ酸カルシウムは専用の食餌を使っても溶解させることは困難なので、入院治療で体力が戻ってきたところを見計らって膀胱結石を摘出する手術を行いました。
摘出した結石は1cm近くある大きなものが5つ、中くらいのものが7つ、それ以下の小さなものまで含めると全部で20個以上になりました。
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大小様々な結石がたくさん摘出されました。大きい結石もそれはそれで問題ですが、小さい結石は細い尿道で詰まってしまうという危険があります(特に男の子)。
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術後の写真です。膀胱の中にあった結石は全部摘出することができました☆
摘出した結石を再度検査に出したところ、結果はやはり前述のシュウ酸カルシウムでしたので、現在は再発を予防するために食餌療法を続けてもらっています。ちなみに、シュウ酸カルシウムによる尿路結石症は適切な食餌療法が行われないと3年以内に約半数が再発するという非常に再発率の高いものなので、特に飼い主さんの食餌療法に対する意識が重要です!
現在、この子の症状は落ち着いていて、以前のように元気に暮らしていますが、食餌療法は続けながら定期的に尿検査などのチェックを行っています。
犬の尿路結石症の原因は、その種類にもよりますが、一般的には
・細菌性膀胱炎などの尿路感染症
・飲水量の減少
・食餌中のマグネシウムやカルシウム、リン酸といったミネラル成分の過剰摂取
・内分泌や代謝の異常
などが関与しているといわれています。また、肥満も危険因子の一つです!
症状は結石の存在する部位によって様々ですが、よく認められるのは頻尿や血尿で、排尿時に痛みを伴ったり切れが悪くなったりもします。また、今回の子のように尿路感染症が合併すると発熱や食欲不振といった全身状態の悪化を伴うこともあります。
これらを放っておくと、炎症や感染が進行して衰弱してしまうだけでなく、場合によっては結石が尿管や尿道に詰まってしまって膀胱破裂や腎不全を起こして命を落としてしまうこともあります。
日頃からワンちゃんの排尿状態はよく観察してあげてくださいね!